第11章 小田原城再び
氏照は短刀を持つ手をそのままに答えた。
『私は兄と違って待つのは苦手でね。
兄がなかなか動かないから顕如という駒を失うことになった。
ならば私が代わりに貴女を利用して天下統一をしてやろうと思っているんだよ』
きっと城内での謀反を企てているのはこの人なんだろう。こういう時の感は非常に良く当たる。
『何度も言ってきましたが私には力などないですし、術も使えません』
『例えそうだとしても十分利用価値はある。
戦の火種になってもらうために貴女の屍を安土に送ってやる。早く安土に帰りたいだろう?』
(え!屍!?)
あまりの身勝手さにだんだん腹が立ってくる。
『さっきの和菓子、やはり毒が入っていたんですね』
『警戒して口にしないのは誤算だった。だがあの護衛の忍がいなくなれば上手くいったも同じだ。
さあ、安土に帰してやろう。これで戦が始まるのだ。死にたくなければ術とやらを使って逃げるんだな』
氏照はそう言うと短刀を持つ手に力を入れる。
(この目、本当に本気だ!どうしよう!)