第11章 小田原城再び
『どうかなさいましたか?』
無言で急に振り返ったので小太郎が警戒した様だ。
『いえ、何でもありません。行きましょう』
(北条が天下統一を狙ってるなら上杉武田とは敵対関係にあるはずなのに……どういう事?)
再び歩き始めたが、頭の中は幸村の事でいっぱいになっていた。
氏政の部屋につくと小太郎は廊下に控えて護衛を続ける。
ここに来るのはお酒を飲んだあの夜以来だ。
どんな顔をして部屋に入ろうかと悩んだが答えは出なかった。
思い出さないようにすればするほど思い出してしまい、完全に自己嫌悪に陥る。
悪いのは自分じゃないはずなのに。
結局普通に部屋に入り、何もなかったかのように囲碁勝負が始まった。
これまでに比べたら集中力を欠いていたものの、今夜の勝負も直美が勝利した。