第11章 小田原城再び
直美は今夜も囲碁勝負をするため、小太郎と一緒に氏政の私室へ向かっていた。
いつもと同じ廊下を歩いていると、正面から体格の良い青年が歩いてくるのが見える。
その青年は直美が近づくと深々と頭を下げた。
何となくどこかで会った事があるような気がするものの、顔がよく見えないためハッキリと思い出せない。
直美も頭を下げて無言で挨拶を交わし、再び歩き始めた。
(あの人、絶対にどこかで会った事がある…)
この時代に来てからの事を振り返り、さほど時間が経たないうちに一つの結論にたどり着いた。
(本能寺の森にいた幸村って呼ばれてた人だ。何でここにいるの?)
後ろを振り返ってもすでにその姿は見えなくなっていた。