第10章 顕如
煙と炎の中、刀と錫杖がぶつかり合う音が何度も響く。
睨み合いが続いたと思うと、今度は激しい斬り合いが続く。
お互いの武器が体の一部をかすめ、そこから血が滲んでも2人は戦う手を止めなかった。
無言で斬り合う信長と顕如だったが、一区切りがつく度に傷が増えていくのは顕如だった。
『あの女は随分と北条に気に入られているようだな』
『それがどうした。貴様には関係ない話だ』
直美の話を出された信長の表情は険しさを増していく。
怒りにも似た感情を刀に込めて攻撃を開始すると、ついに大きな音を立てて顕如の錫杖が真っ二つに折れた。
その瞬間、信長は顕如の首に刀を突き付けた。
『ここまでの様だな』
顕如は折れて使えなくなった錫杖を床に投げる。
『殺せ。殺さぬならこの城とともに燃え尽きるとしよう』
『殺すのは後からでも出来る。貴様は牢の中から俺が天下統一を成す姿を眺めていろ』