第10章 顕如
『死にたくなければ城の全ての井戸にこれを入れてこい。従わなければ殺す。貴様の生まれ育った村も焼き討ちにする。
だが言う通りにするなら褒美を取らせる』
信長の低い声が響いた。
男は震えながら頷くと塩の入った袋を受け取り城へと戻って行った。
それから間もなく、井戸水の異変に気づいた顕如の部下たちが川の水を汲むために城の外へと出てくる。
それを政宗たちが待ち伏せし、次々切り伏せていった。
『米も水も断った。あとは時間の問題だな。
城を見張れ、顕如を逃すな』
いつになく力の入った信長の声に緊張感が高まっていった。