第10章 顕如
『なー、何だあれ!歩くだけなのにちょっと近すぎじゃねーの?』
幸村は少し気まずそうに直美たちを見ていたが、軒猿の2人には全く違って見えていた。
『一見、恋仲の男女の様にも見えますが護衛としては完璧です。あれでは全く隙がありません』
『そうかー。信玄様も言ってたけど、あの護衛が近くにいるとあっちもこっちも身動き取れそうにないな』
悟られない様に2人の後をついていくと幾つかの店に寄った後、小田原城へと続く門をくぐっていった。
『やっぱり間違いない、あいつが直美だ。
風魔が別の任務で留守の時に逃がしてやるからあと少し待ってろよ』
小さくなっていく直美の後ろ姿を見ながらぎゅっと拳を握りしめた。