第10章 顕如
ふと、軒猿の一人が小さい声で幸村に話しかける。
『真田様、この先の反物屋の前に立っている男が風魔小太郎です』
言われた方向を見るとそれらしき男が店の中を覗いているのがわかった。
『わかった、あいつだな。こっちの気配を絶対に悟られるんじゃねーぞ』
幸村たちは離れた場所に隠れて様子を伺う。
しばらくすると店の中から小柄な女性が出てくるのが見えた。
買い物をしていた様だ。
『んー?よく見えねーけどあれが直美か?』
店の前にいた小太郎は周囲を見渡した後、直美に寄り添うようにして歩いて行った。