第42章 いざ、安土城へ
そしてそれから数日後。
何事もなかったかの様に日常生活が戻りつつある。
秀吉と光秀の御殿を再び訪ねては、姫らしくあるための礼儀作法を教えてもらう。
家康と二人で薬草を摘みに行くこともある。
三成には囲碁の相手をしてもらうが、やはり1度も勝つことが出来ない。
政宗と共にみんなの朝食を作り、それを広間へ運ぶ事もある。
時には織田家ゆかりの姫として信長の政務の手伝いをすることもあった。
今日は信長から特別なお使いを頼まれて三成と二人で話をしながら城下町を歩く。
頼まれたのは金平糖。
もちろん秀吉には内緒だ。
久しぶりに訪れた甘味屋で金平糖の入った小瓶を受け取り、再び城下町を歩いているとある店の前で三成が足を止める。
『あ、新しい書物が入ったんだね。三成くん、ゆっくり見てきてもいいよ。私、さっきの甘味屋で待ってるから』
申し訳なさそうに、でもとても嬉しそうな表情をしている三成と別れて先程のお店に戻ると…
『おや、俺に会いたくて戻ってきてくれたのかな』
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこに見覚えのある姿を発見する。
『おい、信玄。くだらない事を言っていると斬るぞ』
もう一人の声も口調も間違いない。
『信玄様!謙信様も!!』
まさかここにいるはずがない、そう思っていた相手との突然の再会。
わけがわからず上手く言葉が出てこなかった。