第42章 いざ、安土城へ
『あの、どうして……』
やっと出てきた言葉はそこから先が続かない。
すかさず信玄が返す。
『天女に会うのに理由がいるかい?』
『おい、斬るぞ』
二人のやりとりが懐かしく、つい笑ってしまう。
『泣かされてはいないな?』
『はい、謙信様。大丈夫ですよ』
『泣かされたらすぐに狼煙を上げろ。いつでも春日山に連れて帰るからな』
『ふふっ、わかりました』
楽しい時間はあっという間で。
近況報告をしているうちに、遠くから三成が近づいてくるのが見える。
『天女にお迎えが来たようだな』
『石田三成…いつかの勝負の決着を着けるか…』
『わー!謙信様、ダメです!絶対ダメ!信玄様、あとはよろしくお願いしますね。私、もう行きますから!』
もちろん全て謙信の悪い冗談である事はわかっている。
そしてまた近いうちに春日山の皆に会える、そんな気がしてあえてサヨナラは言わなかった。
(なんだかんだ言ってもやっぱり自分の居場所はここなんだな)
城下町を歩きながら幸せをかみしめる。
不安がないと言ったら嘘になるけれど。
戦のない未来を作るために自分が何か貢献出来るのであればこんなに嬉しいことはない。
(よし!今日も笑顔でただいまを言おう!)
そしてそんな直美の笑顔をこの先ずっと守るのだと、武将たち一人一人が心に誓うのだった。
ーーー完ーーー
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