第8章 小田原城
『今日は碁の勝負はもうよい、代わりに酒に付き合え』
氏政はそう言うと部屋の外にいる小太郎に2人分のお酒の用意をさせる。
『氏政様?もしかしたら私の分もあるのですか?』
『当然だ。安土にも銘酒が数多くあったはずだ。少しくらいは付き合えるだろう?』
(うっ、実は日本酒ダメなんだよね…安土のお酒も一口も飲んでないし…)
『では、梅酒をいただいてもよろしいでしょうか?この町は梅が有名でしたよね。是非いただいてみたいのです』
『いいだろう、この城にある一番の物を用意させる』
そしてすぐに最高級の梅で作られた献上品の梅酒が部屋に運ばれてきた。
(ああっ!氷も炭酸もないんだったー!このままストレートで飲んだらかなり濃そうだな…)
『ありがとうございます。いただきます』
覚悟を決めて口に運ぶ。
『………お、美味しいっ!』
献上品レベルになるとそのまま飲んでもこんなに美味しいのかと正直かなり驚いた。
『こんなに美味しい梅酒、初めてです』
『そうか、好きなだけ飲め』
梅が有名なのを知っていた事と、美味しそうに梅酒を飲む直美の姿に気を良くした氏政は、自らもハイペースでお酒を飲み始めた。