第8章 小田原城
小田原城では
氏政との囲碁勝負に連勝した直美は、それから毎日の様に氏政に呼ばれ、囲碁の相手をさせられていた。
この時代に来てから打ち方を覚えたため、特別に囲碁が得意なわけではない。
三成の教え方がかなり上手かったのだと改めて感謝していた。
勝負に勝った褒美として城下に出られる様にならなければ、かなり気持ちが沈んでいただろう。
囲碁勝負はその後も連勝に連勝を重ねており、直美が負ける事は一度もなかった。
今日も夜になってから呼び出され、小太郎の監視の元、氏政の私室に向かう。
いつもの様に部屋の外に小太郎を待たせて中に入ると、氏政がすでに碁盤の前に座り直美を待っていた。
『お待たせして申し訳ありません』
『早く座れ。さっそく始めるぞ』
(うわ!やる気満々!もしかして必勝法でも覚えてきたのかな!?)
会話はなく、静かな部屋に碁石を交互に置く音が何度も響く。
そして数分後。
『俺の負けだ』
結局直美が勝つのだった。