第42章 いざ、安土城へ
信長、家康、そして家康の命の恩人である直美が城に来るとの事で、この日は豪華な食事が振る舞われ、信長たちに酌をするための列が途切れることはなかった。
家臣たちに一通り挨拶を済ませると、信長も家康もそれぞれのペースで注がれたお酒を飲みながら町の治安や港を出入りする船の様子など報告を受けては指示を出していく。
(凄い……これはまるで軍議!飲みながらこんな話が出来るなんて…)
姫様もどうぞと盃にお酒を注がれて少しずつ口にするのだけれど。
(いやいや、まさかここで酔うわけにはいかないから。立ったまま寝るとか絶対ダメだから)
『直美?どうしたの、百面相してるけど』
家康に話しかけられて我に返る。
『うん……あのね、少し酔っちゃったみたいだから先に失礼してもいいかな』
『わかった。明日も早いからそれがいいね。部屋まで案内するけど立てる?』
『うん』
家康の後ろを歩き、案内されたのは一人で使うには広い部屋で。
『家康、ちょっと広すぎない?』
『ここが一番安全なんだ。一晩だけ我慢して。怖いなら俺か信長様の部屋に来てもいいけど…』
『だ、大丈夫。ほら、これがあるし』
そう言って家康からもらった香袋を懐から取り出す。
『そっか、なら大丈夫だね。安土に戻ったら作り直してあげるから今夜はゆっくり休んで。それと……ちゃんと持っててくれてありがと。じゃあ、おやすみ』
家康は少し照れたようにお礼を言うと足早に広間へと戻っていく。
その夜は着物を脱いで横になり、目を閉じるとすぐに深い眠りについたのだった。