第42章 いざ、安土城へ
信長と家康が滞在するという話が事前に行き届いていたため、浜松城には家康の家臣たちが勢揃いしていた。
江戸幕府の樹立に功績をあげた、いわゆる徳川四天王の4人もこの日は早くから浜松城に駆けつけ、今は広間で信長たちの到着を今か今かと待っている。
立派な城門をくぐって城の中に足を踏み入れるとまず先に城の奥にある部屋に案内された。
『直美、袴のままいるのも嫌だろうから好きな着物に着替えなよ』
部屋に用意されていたのは数種類の着物や帯、髪飾りなどどれもが上質だとわかる物ばかりだ。
『すごい!これ、家康が選んでくれたの?』
『うん。そうだけど。明日発つから今日だけしか着ないだろうけど好きなの選んで』
『家康、着物か。随分と大胆になったものだな』
信長が2人の会話に入り込む。
『は?なんですか、その不敵な笑みは。袴のままいるよりいいでしょ。それにこれから家臣たちに挨拶もしなきゃいけないし。織田家ゆかりの姫なんだからきちんとしてもらわないと。挨拶の前に直美に見せたいものがあるから急いで着替えて』
そう言いながらも少し照れたような家康の表情を信長はもちろん見逃さない。
急かされる様に着物を選び、帯を選び、髪を整えて化粧をすると、休む間もなく次の場所、天守に案内される。
『間に合った。今が一番綺麗に見える頃だから』
家康を先頭に天守に足を踏み入れる。
そしてそこから見える光景に、家康も直美も信長も思わず息を飲んだのだった。