第42章 いざ、安土城へ
信長たちは順調に遠江までの距離を縮めていく。
春日山を出発した日は南信にある宿に泊まり、翌朝再び早い時間に出発する。
家康の領地に入ってからは家康が先頭を、小太郎が最後尾を走っていた。
ふと、家康が馬を止めてこちらを振り返る。
『直美、遠江出身って言ってたけど故郷は具体的にどの辺りなの?』
一言で遠江といっても大井川から西側がそれに当たるので面積はとても広い。
『えっとね、三方ヶ原のすぐ近くだよ』
『わかった。今からその辺を通りながら浜松城に向かうから。ゆっくり見たかったら言って』
再び走り出すとしばらくして目の前に見えてきたのは広い草原。
家康がゆっくり進んでくれた事で故郷はこの辺りなのだと確信する。
(何もないけどきっとこの辺がそうだよね)
あまりにも何もない事に正直驚いてしまうくらいだった。
『何を呆けた顔をしている。貴様の故郷はこの辺りではないのか』
信長に声をかけられてすぐさま現実に戻る。
『はい、この辺であっている………と思います』
『その顔を見ると500年後とは全く違うらしいな』
『予想はしてましたけどここまで何もないと…かといって何か期待してた訳でもないんですが……』
『この辺りは鷹狩りには良い場所だな。安土城からは離れているが、たまにここで狩るのもいいだろう』
あまりにも何も無いことにちょっと驚きはしたけれど。
むしろ何もなかった方が良いのかもしれない。
『家康ー!ありがとう!普通に走って大丈夫だよ!』
大きな声で伝えると馬のスピードがどんどん上がっていき、休憩を挟むこと無く浜松城へ到着したのだった。