第42章 いざ、安土城へ
溢れそうになる涙をこらえながら御影の背に乗り手綱を握る。
直美の荷物を小太郎が謙信から受け取り、安全確保のため先頭に立って走り始める。
『俺が最後にいくから直美は信長様と先に行って』
『うん、わかった。みんな、本当にありがとう!また必ず遊びに来るね』
見送りに来てくれた全員の姿を視界に捉え、数回大きく手を振ってから御影を走らせた。
小さくなっていく直美たちの後ろ姿を見ながら謙信が楽しそうに口を開く。
『景家、冬の間城の事は任せたぞ』
『はい。もしやもう行ってしまわれるのですか。戻ってきてまだ数日だというのに。予定よりだいぶ早いのでは?』
『しばらくの間は戦もない。ここにいても暇だからな』
『わかりました。直美様の物はもちろんですが、安土へ送る物があればはすぐに準備いたします』
謙信と景家に続きながら信玄たちも城の中へと戻っていく。
『幸、そういうことだから準備はいいな?話がまとまったら安土の次はいよいよ甲斐だ。忙しくなるぞ』
『良くないって言っても強制連行なんだろ。こうなったらどこまでも着いていきますよ』
『幸村、頑張って』
『佐助、人の事心配してる場合じゃないだろ。その言葉、そのまま返してやる』
『俺は謙信様についていくだけだ。何も問題はない』
『それが一番大変そうなんだけどな。ま、お互い拒否権の無い者同士頑張ろうぜ』
大切な客人たちが去った後の春日山城は更なる静寂に包まれる。
信長たちが出発して一刻も経たないうちに、4人もまた安土に向けて馬を走らせるのだった。