第42章 いざ、安土城へ
あっさりとした空気のまま宴は終わり、そして迎えた次の日の朝。
謙信が直美の部屋を訪れていた。
『荷物は最低限の物だけ持って行け。安土で使いそうなものはすぐに送り届ける。この部屋はこのままにしておく、いつでも戻ってこられる様にな』
謙信がそう言ったこともあり、荷物はかなり少なめだった。
これから越後には雪が降り積もる。
再び春日山城を訪れるのは雪解けの後、少なくとも4ヶ月は先になるだろうか。
『謙信様、文を書きますね。そしてまた必ずここへ参ります』
『ああ。もし安土で泣かされるような事があればすぐにここへ来い、待っているぞ。それから次に来たときは手加減してやらぬからな』
『手加減?何の事ですか?』
最後の言葉が意味するものは直美にはすぐ理解出来なかった様で。
『何でもない、こちらの話だ。荷物はそれだけか?』
『あっ、はい』
謙信はふっと笑みをうかべると直美の荷物を手に取り、ゆっくりと廊下を歩いていく。
(わからぬままで良い。次は思うままに抱き潰す、もしそれを言ってしまえば反応がつまらぬからな)
(きっと半年弱、ここには戻ってこれないよね。雪が解けたら信長様にお願いしてまた遊びに来たいな)
それぞれ全く違う事を考えながら城門に向かうと、すでに信長たちが直美が来るのを待っている。
もちろんそこには信玄、幸村、景家、佐助の姿もあり、本当にこれでしばらくお別れなのだと思うと急に寂しくなってしまった。