第8章 小田原城
『そんなのが護衛だなんて、あの女本当にただの信長の寵姫なのか?』
『幸村、あの女じゃない。直美さんだ』
佐助の顔はいたって真面目だ。
『幸、あの女じゃない。天女だ』
信玄が続く。
『幸村、斬る』
まさかの謙信も乗っかった。
『もー!あんたら意味がわからねー。で、どうするんですか?』
『織田軍もそろそろ動き出す頃なのだろう?北条とやり合ってる所を突くのはどうだ?この際、まとめて北条も相手すれば楽しい戦になりそうだ』
『うーん、悪くはないが天女を先に助けてやりたい。謙信、戦場に女は必要ないって言ってたよな』
『ああ、俺の刀に勝手に当たって死なれては気分が悪いからな』
『じゃあ決まりだ。まずは天女を助けに行く。信長の寵姫なら助けた後に利用出来るしな。
幸、お前は北条の誘いに乗ったふりをして小田原城の内部に入り込め』
『はあっ!?』
『城の中の様子がわからない以上、この策が最善だろ。もし何かあっても上田城は俺と謙信で守ってやる』
『そんな事心配してんじゃないですけど…』
『幸村、俺からも頼む。城の中なら直美さんに接触出来るかもしれない。脱出の際には全力で応援するから』
佐助も真剣な眼差しで幸村を説得する。
『お前が行かないなら俺が行くが?』
『謙信、冗談に聞こえないぞ』
『……しょうがねー。上司の命令であれば従いますけど…』
『頃合いを見て小田原城に急襲をかけてやるから、隙を見て天女と脱出してくれ。もちろん戦う必要はない。逃げるが勝ちだ』
『餞別にうちの軒猿の精鋭を同行させてやろう。役に立つはずだからな』
『俺が風魔に顔を見られてなければ一緒に行けたのにすまない、残念だ』
『あんたらなー、俺に拒否権てもんはねーのかよ』
『じゃ、決まりだ』
『信玄様、話聞いてます?』
『拒否するなら斬る』
『んもー!謙信様は黙っててください』
こうしてあっという間に話が進み、幸村が北条に仕えるふりをして小田原城に潜伏することになったのだった。