第40章 最後の勝負
『あ!!』
久しぶりに見たその刀に思わず声が漏れ、ピタリと動きが止まる。
懐刀については以前、信長が直々に話をつけると言っていたがそれからどうなっていたのか全くわからないままだった。
(これは自分で取り返すチャンスだよね。でも負けたら……)
信玄の余裕な表情に不安がないと言ったら嘘になる。
負けたら指一本触れられる以上の事が待っているのだ。
(負けたら大変な事になる。でもきっと安土に戻る日も遠くない…やっぱりここは……)
しばらく無言のまま考え、そして出した答えを信玄に伝えた。
『信玄様、この勝負受けさせてください』
信玄の目を見つめながらはっきりとそう答える。
『覚悟が出来たみたいだな。俺はずるい大人だぞ?負けて後悔しても遅いからな?』
『受けて立ちます!』
この勝負には信長からの懐刀、そして謙信との約束もかかっている。
絶対に負けるわけにはいかない。
信玄が碁石と碁盤を部屋に運ぶと二人で向かい合って座る。
『君の本気を見せてもらおう』
不適な笑みを浮かべる信玄の心理作戦に乗せられないよう、心を平常心に保つ様にしながらゆっくりと交互に碁石を置き始めた。