第39章 膝枕と戦女神
一方、安土城では。
信長たちは一乗谷から安土へと戻り、久し振りに全員が広間へ集まって今回の襲撃についての報告と意見交換をしていた。
『本来であれば何も問題なく一乗谷城の制圧に成功していたはずであった』
信長の声に家康が続く。
『毛利さえ邪魔しなければ簡単だったんです。秀吉さんたちが来てくれたから残っていた伊賀の忍たちも一掃出来ましたけど』
『上杉の元にいる忍が解毒薬を持ってきたのは想定外であった。直美が手に入れたと言っていたな。全く、予測不能な動きをしてくれる』
そう言いながらも信長の表情は柔らかい。
『秀吉、三成、小谷城の方は伝えた通りにしたのだな?』
秀吉が小谷城での事を細かく報告する。
『はい、信長様。城には火を付け跡形も残らぬようにと残った部隊に伝えました』
小谷城、一乗谷城、どちらも燃え尽きほんのわずかな残骸を残すだけになっていた。
『ならば良い。2つの城はなくなったが城下に住む者はそのままだ。生活が苦しくならぬ様、目をかけていく。視察は交代で行う、良いな』
全員がその言葉に同意すると、話は直美たちの事に及んでいく。
『信長様、先ほど直美が解毒薬を手に入れたとおっしゃいましたが、まさか一乗谷に来ていたという事ですか?』
秀吉が心配そうな表情で信長に聞いている。
『そうだ。春日山から上杉たちと共に来ていた。安土からの援軍が来るまでの時間稼ぎをすると言って自らやって来たそうだ』
『ふっ……自ら戦場に来るなど、どうやらこれは戦女神という偽の噂を本物に変えた様ですね』
話を聞いていた光秀が笑みを浮かべていた。