第38章 一乗谷城の戦い
『佐助、織田家に関わりのある出自不明の女がいるとは真の話か?』
佐助は臆する事なく真実を述べていく。
『はい。500年後ではそのように記録されています。どうやら伊勢の豪族の娘らしいのですが、それも含めて一切不明なんです』
『そのような女がどのように織田家と関わりがあるというのだ』
『佐助君、それ、私も気になってたの!教えて欲しいな!』
佐助は少し困惑した様な表情を浮かべると観念した様にため息をついて、いつもの口調で話し始めた。
『あの短い時間でとっさに思い浮かんだ坂氏ですが………織田信長の側室の女性です。500年後ではその様に伝えられています』
『『側室!?』』
その場にいた全員が驚きの声を上げる。
あの冷静な小太郎でさえも、驚きの表情を隠せなかった。
『佐助君、それ本当なの?』
『うん、間違いないよ。あ、だからと言って名前の通り側室になる必要はないから』
まさか出自不明の人物が信長の側室にいたなんて驚いたけれど。
側室どころか正室さえいない今の状況を知っている謙信たちが驚くのも無理はなかった。
『佐助、本当に名前以外その坂氏とやらに成り代わる必要はないのだな』
『絶対大丈夫とは言えません。ですが俺の考えている理論上では大丈夫です。謙信様。刀を下げてください』
いつの間にか謙信が音もなく佐助に姫鶴一文字を向けている。