第38章 一乗谷城の戦い
確かにとっさの出来事だったとはいえ、信長に引き寄せられて密着していた。
それもみんなの前で。
思い出すと顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
『と、とりあえずもう春日山に帰りませんか?これ以上の長居は不要ですよね。あれ?そういえば小太郎さんは?』
離れた場所で一部始終を見守っていた小太郎が直美のもとへと近寄る。
『ちゃんとここにいますよ。気配を消すのは得意ですからご安心ください』
『よかった!あの……私たちはこれから春日山に戻ります。小太郎さんのおかげで助かりました。本当にありがとうございました』
深々と頭を下げると小太郎の優しい声が聞こえる。
『直美様、どうか頭を上げてください。
実はつい先ほど今回の件で信長様から褒美を頂きました』
『信長様が小太郎さんに褒美を?』
『はい。風魔一族の新しい主を直美様にする許可を頂きました。
我々一族が今こうして存在するのは貴女のおかげですから、今度は私達が貴女のために力を尽くし、守るとお約束いたします』
いきなりの展開に思考が追い付かない。
しどろもどろになりながらなんとか返事をする。
『え!主!?ちょ、ちょっと待って!そんなの大袈裟だし、私を守っても報酬を払えないよ!?』
『ご心配なく。その点については信長様からいただけると話はついておりますし、報酬目当てではありませんので直美様が気にする必要はありません。
さっそく春日山まで護衛いたします』
頼もしい仲間が増え、全員で春日山に向けて出発する。
雨で濡れていた髪や袴もあっという間に乾いていく。
御影の背中の上でとても気持ちよく風を感じながら、前に向かって走り続けて行った。