第38章 一乗谷城の戦い
『直美、春日山城には俺と家康が迎えに行く。遠江を視察しながら安土に戻る予定だ。楽しみにしていろ』
それは忘れもしない、楽しみにしていた信長との約束だった。
『はい!わかりました。お迎えをお待ちしています』
元気よく返事をすると信長も家康も笑みを浮かべる。
その後、燃えて崩れた一乗谷城を2人が去っていくと、外が静かになったのに気づいた幸村が馬小屋から出てきてこちらに走り寄ってきた。
『あの、全員びしょ濡れで何してんですか?』
すぐに佐助が返事をする。
『幸村、今まで大変だったんだよ』
『そうだぞ、幸。春日山城に戻ったら甘味を用意してくれ』
『幸村……斬る!』
『はぁっ!謙信様、なんなんですか!』
『幸村、お前がいなかったせいで信玄の刀が使い物にならなくなった。詫びとして鍛練に付き合わせてやる』
『全然意味わかんねーし!よくよく聞いたらただの言いがかり…わ、謙信様ちょっと!』
謙信が刀を抜いて幸村を追いかけて行く。
『幸村には気の毒だが、今の謙信様は非常に気が立っている。逃げ切れないかもしれないな』
『気が立ってる?佐助君、どういうこと?』
『姫と信長が目の前であんなに密着してたからな。謙信ははっきり言葉には出さないが、相当イライラしてるはずだ』
信玄の説明を聞いて、つい先程の事を思い出した。