第8章 小田原城
直美が北条に連れ去られてすでに数日がたっていたが、北条からは何の知らせも要求もなく、時間だけが無情にも過ぎていった。
そんな中、ようやく小田原に送り込んだ斥候が光秀の元へと戻ってくる。
光秀は報告を受けると急ぎ足で信長のいる天主に向かった。
天主では安土城下での警備について秀吉と三成が信長と話し合いをしている最中だった。
突然現れた光秀の姿に三成は何かを察すると
『私はしばらく人払いをしてきます』
そう言って天主を後にした。
光秀が天主に来た理由を信長はすでに理解していた。
『やっと斥候が戻ったか』
『はい、小田原城下にて直美の姿が確認できました』
『良かった、あいつ、無事だったんだな』
信長も秀吉も安堵した表情に変わる。
大丈夫だろうと思っていても、実際に報告を受けるまでは心配だったのだ。
もちろんそれは光秀も同じだった。
『いつも同じ時間に城下町に現れる様ですが護衛の男の監視が厳しく、まだ本人には接触出来ていません』
『その護衛の男の正体は掴んだのか?』
『はい。現在、風魔一党を率いている5代目頭領の風魔小太郎と思われます』
『面倒なやつが護衛に付いてるな』
思わず秀吉が声を上げた。