第38章 一乗谷城の戦い
ボロボロになった刀を見て佐助が直美に声を掛ける。
『直美さん、名字だけでいい。500年後の名字から今すぐ坂に変えて!』
『急に変えてって言われても……坂?ねぇ、本当にそれだけで大丈夫なのかな?』
不安そうになっている直美に信長が近寄ると、腕を掴んで引き寄せ胸に抱き入れた。
『わっ!の、信長様!?』
突然の事に驚いて信長を見上げると、真剣な眼差しに至近距離から射抜かれる。
『貴様、何をそんなに不安そうにしている。この時代に残ると決めたならこの俺が守ってやると言ったのを忘れたか』
『……もちろん覚えています』
『ならば今すぐ全ての可能性を試して何としてもここに残れ。これは決定事項だ、いいな』
この状況でそんな事を言われたら答えは『はい』しかない。
『わかりました。信長様、私はこれから名字を坂に変えてこれからもこの時代で生きていきます』
信長の目を見つめながらはっきりそう伝えると、雨と風が次第に弱まっていく。
雨を降らせていた雨雲もあっという間に薄くなり、気づけば図上には青空が広がっていた。
『良かった。正直、名前を変えることに絶対の自信があったわけではなかったんです。でもワームホールは消滅したみたいですね』
感情を表に出さない佐助がすこし笑みを浮かべながらそう言うと、謙信が再び佐助に刀を向けた。