第38章 一乗谷城の戦い
『佐助、確実に落雷を避けられるのはあと数回だ。早く何とかしろ。出来ないのなら斬る』
謙信から姫鶴一文字を向けられながら佐助は必死に何かを考えている。
(どうしよう!歴史に差し支えのない名前なんて急に思い付かないよ!佐助君、本当にいつもごめん)
信長と家康はそれぞれ無言のまま佐助と直美の様子を見守っている。
と、ここで何かを考えていた佐助が自分を見ていた信長に質問を始めた。
『500年後に伝わる話では、織田家の関係者に出自不明の女性が一人だけ存在します。ですが見たところ実際には存在していない様なのでその方の名前を直美さんにいただいてもよろしいですか?』
佐助からの質問に、信長は目をそらすことなく真剣に答える。
『念のために確認しておくが、何という名だ』
『500年後では坂氏と呼ばれている女性で、下の名は不明です。出自について全く不明とされていますが、織田家の関係者であったことは間違いありません』
信長はその名前に覚えはなく、特に反応することなく会話を繋いでいく。
『そんな者は記憶にない。まるで直美のために用意された架空の人物のようにすら思えるな。それで解決するなら自由に名乗るがよい』
『ありがとうございます』
佐助は眼鏡をクイッと上げながら信長に礼を伝える。
雨と風が強まる中、今度は家康が刀を抜いて離れた場所に向かって放り投げた。
地面に落ちる前に落雷が刀の先端を直撃し、焦げて使い物にならなくなった刀が音を立てて地面に落ちていった。