第38章 一乗谷城の戦い
止まない雨と風の中、全員がそのまま直美のそばを離れようとしなかった。
険しい顔をして空を見上げた佐助が何かを思い出した様に口を開く。
『さっき信玄様に言われて考えたんですけど、俺と直美さんには大きな違いが1つありました』
全員が黙ったまま佐助に視線を向ける。
『佐助君、どういうこと?』
『俺は元々下の名前が佐助だった。だからこっちの時代に来てからは実在しないと言われている架空の忍者
、猿飛佐助の名前を名乗らせてもらってた。だからこの時代に上手く融合出来た。ざっくり言えば猿飛佐助が実在してもしなくても大して歴史は変わらない…』
全員が静かに佐助の言葉に耳を傾ける。
『直美さんは元の時代の名前のままで今を生きてる。それが恐らく歴史の歪みになる可能性があるんだとしたら……だから500年後にも影響のない名前に今すぐ変えたらいいんじゃないかと思うんだ』
『500年後にも影響のない名前か、それは俺たちよりも未来を知る2人の方が的確に決められるんじゃないのか?』
信玄はそう言うと自身の太刀を鞘から抜いて離れた場所に放り投げる。
その直後、投げた刀を狙った様に落雷が直撃した。
『確実に狙ってきてるな。だが誘導作戦は成功だぞ。雷が落ちる直前に刀を離れた所に投げろ。俺から右回りで順番にだ』
(刀を避雷針の代わりに使ってる!こんな状況でも冷静だなんてさすがとしか言えない!)