第38章 一乗谷城の戦い
『佐助、具体的にどうするのだ。そんなことが可能なのか?』
『佐助君みたいに軒猿に入れてもらうとか?』
『直美さん、さすがにこの短時間でそれは…』
佐助がそう答えた直後、3度目の大きな落雷が崩れかけた天守に再び直撃した。
『直美様、城の中はそろそろ危険です。炎がかなり燃え広がってきました』
離れた場所で様子を見ていた小太郎が報告のために駆け寄る。
『直美様、時間がないのはわかります…でもこれ以上ここにいるのは全員危険です。とにかく外へ』
全員の視線が外の雨と風を捉える。
『どうしよう…強制的に戻されなくてもすむには…』
ワームホールが相手ではピンチの時の交渉も全く役に立たない。
無力さを感じていると謙信にそっと手を取られた。
『出るぞ。ここにいては命を落とす。俺の目の前でそれだけはあってはならんからな』
炎が一気に広まってきたため全員急いで城の外に出ると、ちょうど信長と家康がこちらに向かって来る所だった。
『信長様!家康!待って!今は私に近づかないでください!謙信様たちも私から離れてください!危険です、お願いします』
信長と家康は2人とも状況がわからないため直美の言うことを無視して雨の中をどんどん近づいてくる。
謙信、信玄、佐助、そして小太郎もまた誰一人として直美のそばから離れようとはしなかった。