第38章 一乗谷城の戦い
雨は降っているが城を燃やす炎の勢いが収まることはない。
燻すような煙の匂いが城の中に広がり始めている。
『逃れる方法…どうしたらいいんだろう…佐助君、本当にそんな方法あるのかな』
直美の不安そうな表情を見て謙信も口を開く。
『佐助、なぜお前は狙われない。強制的に元の時代に戻されるならお前がワームホールに狙われないのは何故だ』
『謙信様、それを今考えているところです』
佐助が眼鏡をクイッと上げながら答える。
『確かにそうだよ、どうして私なんだろう。きっと何か理由があるんだよね』
『姫、俺と謙信は今までずっと佐助と一緒だったが、こんな状況は初めてだ。だから佐助と姫の違う部分を何でもいいから考えてみろ』
信玄は周囲を警戒しながら冷静に意見を述べる。
上の階から伝わってきた炎が離れた場所に燃え広がって来ているのが見えた。
『男女の違いとか…忍者になったとか…住む場所が安土と春日山の違いとか…うーん……』
『俺はこの時代に戻っても大丈夫、でも直美さんはこの時代にいてはいけない……』
佐助は無表情のまま何かを真剣に考えると、真面目な声でこう伝えた。
『この時代にいてもいい存在にすればいいんですよね』
思わぬ提案にその場にいた全員が佐助に視線を向けた。