第38章 一乗谷城の戦い
一方、織田軍の本陣では。
織田軍の本陣に到着した援軍を率いてきたのは秀吉と政宗だった。
家康も解毒薬のおかげでかなり回復し、本陣での作戦会議に参加している。
指揮を取っているのはもちろん信長だった。
『時間的に本願寺の門徒たちが一乗谷城からの撤退を終わらせている頃だ。全員総出でここら一帯にいる伊賀の忍を殲滅させ、一乗谷城には火をつける』
『忍なら遠慮なく斬り捨てても良さそうだな。やっと気持ち良く戦えそうだ』
政宗は楽しそうな表情でその場に立ち上がる。
『でもちょっと待ってください。あれを見てくださいよ』
家康にそう言われて全員が一乗谷城の方向を見ると、城の上だけが厚くて黒い雲に覆われているのが見えた。
『おい!何だあれ!信長様、危険ですので城には近づかないでください。俺が様子を見てきます』
厚い雲の中では電気が流れて雷が発生しているのか、城の真上で絶えずピカピカと光り続けている。
秀吉の申し出を信長は笑みを浮かべながら一蹴した。
『何かはわからぬが面白そうではないか。この目で確かめてくれるわ。家康は共に一乗谷城に来い。伊賀の忍は秀吉、政宗に任せる。以上だ』
一度決めたからには信長の意見が覆らないのは周知の事実だ。
秀吉は何か言いたげにしながらも黙って信長の意見に従う。
そしてすぐにその場は解散となり、秀吉と政宗は兵たちを率いて忍の殲滅作戦を実行していく。
信長と家康は一乗谷城に向かうものの、途中から激しい雨と風に見舞われる。
その後も止まることなく走り続け、ようやく一乗谷城へと到着したのだが、その時目に入った光景は雷が落ちて一部が燃えている城の姿だった。