第38章 一乗谷城の戦い
(雨だ…さっきまで良い天気だったのに…)
空はいつの間にか厚くて黒い雲に覆われている。
ちょうど良いタイミングで姿を消していた小太郎が城から出てくるのが見えた。
小太郎はすぐに直美の元に駆け寄ると、城内の部屋の一部を門徒たちから明け渡してもらった事を伝える。
『小太郎さん、ありがとう!でもどうやって明け渡してもらったんですか?』
『本願寺の方たちと風魔の関係は、北条と顕如が手を組んでいた時期があったため、お互い知らない仲ではありません。説明したところ、すぐに部屋を空けて用意してくれました。どうか部屋でお休みください。撤退も間もなく完了するそうです』
『わかりました。御影たちを休ませるついでに少しお城で雨宿りですね。謙信様も信玄様も一緒に行きましょう!』
雨は段々強くなり、部屋の中に入った時には風も強くなり始めていた。
『佐助君たち、大丈夫でしょうか?』
『姫、あの2人なら心配ない。ただの雨と風だ。そんな事より心配すべきはこの城の中なんだが……謙信、お前もとっくに気づいているんだろ?』
『ああ、当たり前だ』
『え?このお城の中に何かあるんですか?』
謙信と信玄が交わした不穏な会話に、その場の空気が緊張に包まれる。