第38章 一乗谷城の戦い
『間もなく安土からの援軍も到着するはずだ。一乗谷城も早ければ一刻後には誰一人としていなくなるだろう。足手まといになりたくなければそれまでしっかりと休んでいろ』
信長からの厳しくも優しい言葉に、家康は再び体を横たえる。
『あの…直美たちは今、どこで何をしているんですか?』
信長が天幕を出る前に気になっていたことを質問する。
『さあな、この辺りにいるのは間違いないが上杉と信玄が一緒にいるなら心配はいらぬだろう。この本陣が急襲されぬのは案外奴らのおかげかもしれんぞ』
もちろん信長にも直美の詳しい居場所はわからない。ただ一つ分かるのは謙信たちに守られていることだけだった。
『……戦いから避けるために春日山城に行かせたのにこんな所で何やってんだか。帰ったら厳重注意ですね』
(でもおかげで本当に助かった。感謝しても言葉じゃ足りないくらいだ)
『とにかく今は休め。援軍が来たら再び出陣し、伊賀の忍を殲滅させる』
信長はそう言って天幕を出ていく。
家康は信長の背中を見送ると懐に入れた香袋を出して枕元に置き、再び体を休ませることにした。