第38章 一乗谷城の戦い
織田軍の本陣を出た佐助と小太郎は馬で一気に駆けていき、一乗谷城にたどり着く。
2人が織田軍の人間ではない事がわかると危害を加える様なそぶりもなく、顕如からの直筆の文を持っていることを伝えると簡単に一乗谷城の中に入る事を許された。
佐助は信長から預かった文を主導者とみられる男に渡し、見えない場所で手を加えられない様、その場で中を確認する様に促す。
その筆跡を見て間違いなく顕如からの文であると確認すると、主導者の男は苦々しい表情を浮かべながら佐助と小太郎に質問を投げかけた。
『確かにこれは直筆で間違いないのだが、織田信長が顕如様を刀で脅して書かせたのではないか?』
この質問に佐助が答える。
『織田信長という人はそのような事をする人ではありません。顕如さんに刀を向けるくらいなら最初から牢に入れずに殺しているのではないですか?』
『確かにそうかもしれないが……』
『悪い様にはしません。どうか今回は文にある通り武器を収めていただけませんか?それが貴方たちの主からの命令ですよね』
佐助は眼鏡をクイッと上げると怯むことなく、主導者の男と対峙する。
『……わかった。今回は顕如様の文に従い撤退する。だがこれで終わりではない。それを忘れるな』
『感謝いたします』
男は自分の仲間たちに顕如からの手紙の内容を確認させると、一斉に一乗谷城から撤退する準備を始めたのだった。