第38章 一乗谷城の戦い
その時、信長は初めて佐助の手の一部が消えかかっている事に気がついた。
『貴様も500年後から来たのだったな』
『はい。このままでは歴史が大きく変わり、俺も直美さんも存在しなくなる可能性があります。そうならないために織田軍と家康さんを救いに来ました』
『なるほどな。時間がないのは分かった。今すぐその解毒薬を家康に飲ませろ』
佐助は信長の目の前で小瓶の蓋を開け、家康の上半身を軽く起こすと解毒薬を口の中へと流し込む。
するとすぐに意識は戻らないものの、間違いなく効果はあった様で家康の青白い顔が生気を取り戻した。
と、同時に消えかけた自分の手の一部が元に戻るのを確認することが出来た。
(良かった。今頃きっと直美さんも安心しているはずだ)
佐助は家康をゆっくり寝かすと、頭の近くに直美から預かった香袋をそっと置く。
(これは直美さんからです。今は安心して休んでください)
佐助は静かに立ち上がると再び信長と向かい合う。
『これで大丈夫だと思います。家康さんの意識が戻る前に俺は謙信様たちの所に戻ります』
『よくやってくれた。落ち着いたら褒美をやるからいつでも安土に遊びに来い』
『褒美ですか…』
佐助が何かを思案しながら再び口を開いた。