第38章 一乗谷城の戦い
突然の事に慌てた忍たちは直美を庇いながら応戦するが、謙信たちに敵うはずもなく。
『目を開けろ。もう終わったぞ』
そう言われて目を開けた時にはすでにその場は静けさを取り戻していた。
『お前が交渉するより早いと思った。怖がらせてすまない』
正直ちょっとビックリしたけれど、確かに自分が交渉するより確実で何倍も早かったに違いない。
『いえ、私は大丈夫です。それより解毒薬は!!』
『直美様、こちらにあります。今すぐに織田軍の本陣に届けて参りますので安心してください』
小太郎が解毒薬の入った小瓶を直美に見せる。
『小太郎さん、俺も一緒に行きます。謙信様、よろしいですか?』
『構わん。ついでに薬が効いたかどうか見届けて来い』
佐助が小太郎に同行を申し出ると、直美が懐から何かを取り出した。
『佐助君、小太郎さん、大至急お願いします!あとこれ、家康のそばに置いて欲しいの』
そう言って佐助に手渡したのは、家康が直美に渡した香袋だった。
『この香り、心を落ち着ける効果があるんだって。家康にはゆっくり休むように伝えてくれるかな』
『うん、わかった』
佐助は香袋を受けとると馬の背に乗り小太郎の横へ移動する。
『直美さん、もし解毒薬を飲ませて俺たちの体に変化がなければ、その時は何か違う方法で歴史を守ろう』
『うん、わかった!』
返事をしながら大きく頷き、、佐助と小太郎が織田軍の本陣に向けて出発するのを見送った。