第38章 一乗谷城の戦い
『待て!その女を傷つけるな。解毒薬ならやるから女を無傷のままこちらに寄越せ』
『いいだろう。たが、解毒薬が先だ』
謙信の後ろから小太郎が現れると、その場が再び緊張感に包まれる。
『風魔の頭領、小太郎か!もしや北条から上杉に主を変えたのか?』
『そんな事はどうでもいい事でしょう。まずは解毒薬を。早くしないと軍神が暴れて彼女を本当に傷付けますよ?あまり機嫌がよろしくないですからね』
伊賀の忍が解毒薬の入った小さな瓶を小太郎に手渡すと、姫鶴一文字が直美の首筋から離れる。
『約束だ、薬は渡したぞ。こちらにその女を渡せ』
『ああ、いいだろう』
謙信を見上げると、大丈夫だと言うようにして軽く頷いたのがわかった。
不安になりながらも忍たちのいる方向に向かって歩き出す。
『薬一つで報酬がもらえるなら安いもんだな』
伊賀の忍が直美の腕を掴んだその瞬間、左右から信玄、幸村、佐助の3人が勢い良く飛び出し武器を構える。
『女は約束通り渡した。だが今すぐに返してもらう』
謙信様も刀を構えると躊躇することなく忍に斬りかかっていく。
(うわっ!ここは言われた通りに目を閉じていた方がいいかも!)
目を閉じた瞬間、刀と刀の交わる金属音がその場に響き渡った。