第38章 一乗谷城の戦い
後ろには謙信がいるため安心して背中を預けることが出来る。
謙信の後ろには小太郎、さらにその後ろには信玄、幸村、佐助が続いている。
御影の背に乗り、前方と左右からの気配に気を配りながら走っていると、こちらの目論見通りに伊賀の忍たちがその姿を現す。
上手い具合に行く手を塞がれた所で御影の背中から降り、謙信に目で合図を送ると謙信も近づいて馬を降り、直美の横に立った。
今は迷っている時間はない。
『お前の代わりに俺が交渉してやる。その方が早い。いいか、何があっても守ってやるから目を閉じていろ』
『え!?』
謙信は小声で直美にそう言うと、姫鶴一文字を抜いて肩を抱き寄せる。
そしてその刃先を直美へと向けた。
『わ!謙信様!?』
(何で?これでどうやって交渉するつもりなの?)
忍たちは謙信の突然の行動に無言のまま釘付けになっている。
緊張した空気に包まれる中。謙信が忍たちに向かって口を開いた。
『おい、そこの忍。この女と解毒薬を今すぐ交換しろ。この女を毛利の元に連れていけば金になるらしいな』
めちゃくちゃな交渉だが、今はとにかく謙信を信じるしかない。
姫鶴一文字が直美の首筋に近づくと、忍の一人が慌てて口を開いた。