第38章 一乗谷城の戦い
数刻後
一乗谷に向かって馬を走らせていた謙信たちは、途中で止まって待っていた小太郎から織田軍の様子について報告を受けていた。
『徳川殿が動けない理由ですが、どうやら武器に塗られた毒が原因の様です』
『毒?織田軍なら良く効く解毒薬を持っているんじゃないのか?』
思わず口にした信玄だったが、敵だった織田軍の事は良く知っている。
『それが、武器に塗られたのは伊賀で作られた独自の毒らしく、解毒薬は伊賀の忍しか持っていないと思われます』
小太郎が厳しい表情で答える。
『そんな!家康は大丈夫なの?』
『届いた報告によると意識はありませんが、命に別状はない様です。ただ、早く解毒薬を飲ませないと後遺症が出る可能性があります』
『じゃあ急がないと!謙信様、私、解毒薬の事も交渉します。先を急ぎましょう』
のんびりしている暇はない。
家康に何かあれば歴史が大きく動いて平和な未来も、自分の存在すらも消えてしまうのだ。
『わかった。だが何があってもそばを離れるな。機をを見て俺が交渉のために動いてやる』
(こんな表情をさせるとは…もし休戦協定がなくなったら真っ先に斬るのはやはり徳川か)
謙信は面白くなさそうな表情で再び馬を走らせる。
ほとんど馬を休ませずに一乗谷に向かうと、城の周囲で戦になっている様子は見られなかった。