第38章 一乗谷城の戦い
信長は家康が負傷し、毒で倒れたとの報告を受けるとまずは全ての兵を本陣に戻らせる様に命令する。
『家康の状態はどうなっている』
『仲間と共に本陣に向かっていますが、今はまだ意識を失っています』
(解毒薬がいるな。持ってきた物が効けば良いが…伊賀の忍なら持っているだろうがおそらく普通の兵では歯が立たぬであろう)
『俺が行くか…』
信長がそう言いかけた瞬間、本陣に光秀の家臣が転がり込む様にして入ってきた。
『信長様!大変遅くなり申し訳ございません!途中で忍らしき集団に襲われて到着が遅れました』
肩で息をしながら信長に一通の文を手渡す。
もちろんそれは顕如が書いた文に間違いなかった。
『よく生き延びてここまで来てくれた。礼を言う』
ねぎらいの言葉をかけると光秀の家臣は安心感から力が抜けた様で、両ひざをついて座り込む。
『疲れたであろう、しばし休め。本願寺の連中を黙らせたら次の相手は伊賀の忍だ』
(しかしその前に家康か、早く本陣に戻らせる必要があるな)
『家康を迎えに行き、こちらの態勢を整えてから文を届けに行く。伊賀の忍たちを殲滅させるのは援軍が来てからだ。皆、今のうちに休んでおけ』
信長はそう言うと数人の兵を引き連れて家康の元へと急ぐ。
その一部始終を影から見ていた風魔の一族の者が急いで状況を小太郎に知らせたのだった。