第38章 一乗谷城の戦い
その後も目の前にいた忍の男と刀を交えていた家康だったが、突然自分の背後に何者かの気配を感じてとっさに身を翻す。
家康の反応が遅れたため右の頬を刀の先端がかすめ、そこから血が流れていった。
(忍なら気配を消すのは上手いかもしれないけど、こっちは見えてる相手には負けないから)
すぐに力強く刀を握り直すと、まずは死角から襲いかかってきた男に向かっていく。
(忍が相手なら容赦しない!)
姿が見えてしまえばもう勝負はこちらのもので、もう一人の忍の男を斬り伏せるのにも時間はかからなかったのだが。
ふいに視界が歪む。
(っ………刀に毒が塗ってあったのか……)
死角から襲いかかってきた男の刀には毒が塗ってあり、少量でも確実にその効果が出ている。
全身から冷たい汗が大量に流れ出す。
『一旦本陣に引く!!出来るだけ急いで!!』
家康は周囲にいた織田軍の兵たちに呼び掛けると、自ら先頭を走って信長の元に戻ろうとする。
しかし毒が回るのが思ったより早く、本陣に戻る途中でぷつりと意識が途切れてしまったのだった。