第38章 一乗谷城の戦い
(こいつ!明らかに他の奴らと違う!一体何者だ!)
無言のまま刀を交えると、周囲には今までとは違った金属音が鳴り響き火花が飛び散る。
お互い少し距離を置いて刀を構え直すと、今度はその様子を離れた場所から見ていた門徒たちが家康に向かってくる。
何人もの敵を同時に相手しながら家康は先程の一人だけ雰囲気の違う男に注目していた。
(あいつだけ明らかに戦慣れしてる)
刀を振るいながらその男に視線を向けると、今度はこちらを見ながら懐からゆっくりとクナイを取り出した。
(門徒に紛れ込んだ伊賀の忍か。それなら納得だな)
忍の男が投げたクナイは家康の刀によって次々と弾き落とされる。
何本かのクナイが家康の近くにいた門徒たちに突き刺さると、その様子を何かおかしいと感じた門徒たちは命乞いをしながらその場を走り去っていった。
その場に残ったのは家康と忍の男の2人だけとなり、再び刀を構え直して向かい合う。
(こいつは本願寺の奴らとは別だから手加減する必要はないよな)
それからは目の前の忍と激しい攻防戦を繰り広げるのに夢中になっていたため、家康は死角から現れたもう一人の忍の存在に気がついていなかった。