第38章 一乗谷城の戦い
信長から一乗谷城の制圧を任された家康は、兵を率いて少しずつ城に近づいていく。
わずかな間だが城下町に滞在した経験から、死角になっている場所はだいたい把握しているつもりだった。
(斬ってもいいけど殺すなだなんてちょっと矛盾してるけど、あの人の命令だから多分何かあるんだろ、仕方ないな)
死角となる場所からの急襲を警戒しながら城下町をゆっくりと城に向かって進んで行く。
もともと戦に備えられて作られた城下町のため、この状況で開いている店は一つもなく、町民も家の中に隠れる様に避難していた。
前に来たときとは一転、異様な空気に包まれた城下町は今は戦場の一つとして大きな役割を担っている。
(住んでる人たちを巻き込む前に何とかしなきゃいけないな)
家康が思っていたよりも門徒たちの抵抗は激しく、城門にたどり着く前に数えきれない程の人数と刀を交えていた。
(全く…こんなにうじゃうじゃ、一体どこから湧いて出てくるんだか)
痛め付けられてその場から逃げ出す者もいれば、気を失うまて何度でも立ち上がってくる者もいる。
(この場所はあと数人か…)
信長からの指示を守りながら戦っていたその時、門徒たちに紛れて変装していた伊賀の忍が、忍刀を抜いて家康に斬りかかってきた。
家康はとっさにその刀を受け止める。