第38章 一乗谷城の戦い
一乗谷城の周辺ではあちこちで土埃が舞い、遠くから見てもどこで戦いが行われているか一目でわかる状態だった。
織田軍の狙いとしては本願寺の門徒たちを殺さない様に刀を振るいながら、あとは信長の思惑通りに顕如からの文が届くのを待つだけだったのだが。
(遅すぎるな…途中で何かあったとも考えられるが…)
なかなか文が来ないことに疑問を持ち始めた信長は一乗谷城の制圧を家康に任せ、少しでも早く文を受けとるため本陣へと戻る。
すると後方にいた織田軍の兵から知らせが入った。
『信長様、本願寺の門徒たちとは別の勢力が我々に攻撃を仕掛けてきています』
『別の勢力だと?そいつらの軍旗は見たか?一体どこの軍だ』
『いえ、軍旗などはなく、こちらが織田軍だと気づいた瞬間に武器を手にして向かってくる状態です』
(軍旗がない?ならば領地争いが目的ではなく、単に織田軍への攻撃が目的か。だとしたらおそらくは伊賀の忍だろう)
『そいつらは容赦なく斬り捨てて構わん。だが本願寺の門徒たちは一人も殺すな。念のため安土に援軍を急いで要請する』
『かしこまりました』
急いで戦場に向かう兵の背中を見送ると、信長も再び刀を手にして本陣を守るため警護に当たる。
(おそらく数ではこちらが不利だが、それも顕如の文が届くまでだ。何としても持ちこたえねばならん)
信長は自分に言い聞かせる様にしながら警護を続けた。