第37章 来客
『……確かに守ってやると言ったばかりだがそうくるとはな…この短時間でそこまで考えているならいいだろう。だが絶対に俺のそばから離れるな。時間稼ぎのためだけの交渉だ。もちろん安芸には行かせぬから安心しろ』
謙信が言い終わるのと同時に、広間の襖が急に勢い良く開いた。
そこに立っているのは佐助で、かなり急いで広間に来たのか息を切らしている。
『佐助、騒々しいぞ。何があった』
『謙信様、お話し中のところすみません。直美さん、体は大丈夫?おかしな所や何か異変はない?』
全員の視線が直美へと集中する。
『え?私?うーん、特に具合が悪い所はないけど……あっ!!』
先程まで謙信との会話に夢中で気がつかなかったのだが、左手の小指の先端の感覚がなく、しかも半透明になって消えかかっている。
『佐助君!指が!!』
『実は俺も同じなんだ。謙信様、このままでは歴史が大きく塗り替えられてしまい、俺たちはこの時代どころかこの世に存在することが出来なくなる可能性があります』
『佐助君、あのね、今織田軍が押されてて家康が怪我をしてるの!だからきっとそれが原因だと思う!』
『そうか、家康さんに何かあったらまずいな…』
『佐助、信玄と幸村はどうしている』
『信玄様の部屋で2人で刀の手入れをしている様でした』
『急いで一乗谷へ向かう。信玄と幸村にも今すぐ支度をさせろ』
佐助は急いで広間を出ると、信玄と幸村に事情を説明して春日山を発つ準備を始める。
広間では直美の口から景家と小太郎に全ての説明が行われていた。