第37章 来客
『まず、小谷城ですが織田軍が平和的な制圧に成功した様です。ですが一乗谷城が襲撃を受け、徳川殿が怪我をして動けぬとの事です』
『家康が怪我を!?』
『どの程度の怪我だ、命に関わるのか?』
『まだ詳しい事まではわかりませんが、事実である事に間違いありません』
広間に重い空気が流れる。
『直美様と一乗谷の隠れ家でお別れした後、実は毛利の元に向かい独自で動向を調べていました。
毛利は今回、本願寺の門徒たちの襲撃を事前に知り、騒ぎに乗じて安土を攻めるつもりでいました。
しかし、織田と徳川の2人が一乗谷に向かった事を知ると、金で雇った伊賀の忍を安土ではなく一乗谷に向かわせたのです』
それを聞いた謙信が冷静に状況を予測する。
『織田軍、本願寺の門徒、毛利の放った伊賀の忍、一乗谷城は今頃楽しく三つ巴の戦いということか。織田軍にとっては不利であろうな』
『はい。数刻前の情報では織田軍が押されているとの事です』
『そんな!!』
あの織田軍が敵に押されているだなんて想像がつかない。
それに気になるのは家康の怪我だ。
どうやら顕如の書いた文が届く前に小さな小競り合いが大きなものに発展し、そこに伊賀の忍が加わったことで混乱状態に陥っている様だった。