第37章 来客
『嬉しそうだな、いい表情だ』
少し体が離れたと思った瞬間、額に柔らかいものが触れた。
(あ……おでこにキス…)
『この城にいるのだ、不安になどさせぬ。これはその証だ。ずっと笑っていろ、いいな』
『はい』
(もしかして、元気付けようとしてくれたのかな)
額に感じた熱は冷めることのないまま熱を保っている。
その後は無言のまま謙信に手を引かれて再び広間へと向かった。
『遅くなったな』
そう言って広間の襖を開き、中に入っていく謙信に続いて歩いていく。
(来客ってもしかして!!)
挨拶の後、頭を上げたその人はもちろん直美が知る人物で間違いなかった。
『小太郎さん!どうしてここに!?』
『直美様、お久しぶりです。仲間の知らせで直美様がこちらにいると知り、火急の知らせを持って参りました』
再会の喜びもつかの間、話題はすぐに小太郎が直美を尋ねた理由へと移っていく。
『風魔の頭領が直々に知らせを持ってくるとは、それは悪い知らせか?』
謙信が先に小太郎に問いかけた。
『……捉え方によっては凶報かもしれません』
小太郎と謙信、そして近くにいた景家の表情が一瞬にして険しくなったのがわかった。
『構わぬ、申してみよ』
少しの沈黙の後、小太郎が直美と謙信を交互に見つめながら口を開いた。