第36章 有言実行(R18 )
『うわぁ、凄い、どれも綺麗で素敵!』
思わず漏れた本心が謙信にも聞こえていた様だ。
『気に入ったか、安土では手に入らぬ反物も多いだろう。好きなものを選べ』
これまで安土に居たときもそうでない時も、ずっと用意されていた着物を着てばかりだったため、自分の選んだ反物で着物を作るなど初めてのことだった。
夢中になって一つ一つ反物を手にとって広げ、模様を確認する。
そんな直美の後ろでは、謙信と景家が険しい顔をしながら何かを話していた。
もちろんその声も内容も反物選びに夢中になっている直美には届かない。
謙信は直美の姿を見ると微笑しながら広間を出ていき、その場には景家が残ることになった。
しばらくして謙信の姿が見えない事に気づいた直美だったが、代わりに景家がいた事で何かを察する。
『景家さん、謙信様は?何かあったんですか?』
『謙信様なら今頃信玄殿と大事な話をしておられます。城下にいた毛利の関係者を捕らえましたのでこれから尋問が行われるところです』
『やっぱり…というか、もう捕まえたんですか!?』
『ここには謙信様を始め、優秀な軒猿の他、信玄殿の三ツ者もおります。昨日の佐助殿の証言から噂話の元をたどったところ、先ほど捕らえた男に繋がったのです。おそらく毛利の手下、しかも金で雇われた捨て駒でしょう』
見事な連携プレーにただ脱帽するばかりだ。