第36章 有言実行(R18 )
翌朝、謙信の部屋に来た景家の声に起こされる。
謙信はすでに起きていた様で、留守の間に届いた文の整理をしていた。
景家はこちらに気を使っているのか襖は開けず、廊下から話す声が聞こえてくる。
『謙信様、直美様、お休み中のところすみません。直美様のために反物屋に来ていただいております。どうぞ広間までお越しください』
『わかった、支度が整い次第すぐに行く』
謙信が返事をすると景家が廊下を戻っていく足音が聞こえ、次第に小さくなっていく。
『謙信様、おはようございます』
『起きていたか、ならば話は聞こえていたな?支度が出来たら広間へ行くぞ。城下で一番の反物屋に急いで着物を仕立てさせる』
『え、でも以前こちらにお世話になった時に用意していただいた着物が部屋にありますよ!?』
『部屋にあるものは全て暑い季節に合わせて作られた着物だ。これからは昼間も気温が下がるのだ。寒くて風を引かぬよう上質な着物を仕立てさせる』
そんな細かいところまで気にかけてもらえているなんてこちらとしてはありがたい。
『ありがとうございます。すぐに支度しますね』
隣の自分の部屋に移動すると、急いで着物を着替え髪を整える。
その後、謙信と一緒に広間へ向かうと、すでに広間の中には見たこともないほど綺麗な反物や帯が広げられていた。