第34章 春日山城、再び
『安土城に居た時に、毎日姫が何をして過ごしていたのかみんなで話してたんだ。希望があるならここでも同じように過ごさせてやりたいからな』
『あの織田家ゆかりの姫なんだろ?一体どんな生活なのか検討もつかねーわ』
幸村には全く想像できないらしい。
『普通だよ。最近だともっと姫らしく立ち振る舞うための所作を秀吉さんや光秀さんから教わってたかな。囲碁は三成くんから教わって、馬の乗り方は信長様と政宗から教わって、えーと、家康からは応急処置の方法を教えてもらってたけど…』
『待て待て!お前、織田家ゆかりの姫なんだろ?なんでわざわざ所作なんか習ってんだ?』
(そうだった、幸はまだ500年後から来たことを知らないんだった。でもここで身を守ってもらうんだから言ってしまっても差し支えないよね)
隣にいる佐助を見ると目が合った瞬間に考えていたことを察してくれた様で、代わりに答えてくれた。
『幸村、いい機会だから話す。信玄様も彼女の事についてはすでに知っていると思いますが聞いてください』
信玄は佐助が未来から来たことをまだ知らなかった。
謙信はすでに2人の秘密を知っているため静かにその様子を見守る。
佐助は眼鏡をクイッと上げると、無表情のまま2人が500年後から来たことを話し始めた。