第34章 春日山城、再び
佐助がすぐに謙信に声をかける。
『謙信様、帰ってきたんですね。俺たちはここで直美さんの事について話をしていました』
『私のこと?』
『うん、そう。2人とも部屋に入ってください。せっかくだからみんなで話しましょう』
部屋に入って襖を閉めると、謙信と佐助の間にちょこんと座った。
『で、お前たちはこの女の何を話していたのだ』
『謙信、この女じゃない、天女だ』
『違いますよ、謙信様。この女じゃなくてイノシシ女です』
『全員違います、直美さんです』
『あのー……』
(そういえばこの人たち、前にも同じような会話をしてたよね)
『……ふふっ!』
思い出したら何だか可笑しくなってきて声を出して笑ってしまった。
『皆さん、好きなように呼んでください。あ、でも幸のイノシシ女は却下だから!』
『何でだよ!一番ピッタリなのに』
『だってイノシシじゃないもん!』
春日山にお世話になった過去を含め、ここにいる皆で会話しながら笑ったのは初めてかもしれない。
『で、皆さん、一体私の何を話していたんですか?』
空気が和んだところで謙信と同じ質問をしてみると、それには信玄が答えてくれた。