第7章 風魔の忍
その後、天主には信長、秀吉、光秀の3人の姿があった。
秀吉と光秀の会話を信長は黙って聞いていた。
『光秀、直美には織田の懐刀を持たせてある。酷い扱いは受けていないはずだ』
『懐刀のことは気付いていた。あの刀の意味に本人は
気付いておらず、今だにただの褒美の刀だと思っているみたいだが』
光秀はいつも通り無表情で答える。
『お前、直美の事をずっと調べてるだろ、知ってるぞ』
『ああ、本人が遠江から来たとは言っていたが調べても何も出てこないのでな。俺がこれだけ調べているのに何もわからないのは初めてだ』
『だろうな』
『どういう事だ?』
『秀吉、ここからは俺が説明する』
信長が真面目な表情で2人の間に入った。
『光秀、俺がこれから言う事は全て事実だ。
直美は500年後の未来から来た。
信じられないかもしれないが直美はこの先の戦の結果を知っている。利用される前に助け出さねばならん』
しばらく沈黙の時が流れた。
『そうでしたか。ならば全てに納得がいきます。でも何故それを教えてくれたのですか?』
『直美が貴様を信じているからだ。だから信じてやれ。直美を助け出す事に集中しろ。今は教えた通り姫として一人で戦っているはずだ』
『この事を他に知っているのは?』
『ここにいる3人だけだ。敵には絶対漏らすなと直美にも固く言ってある。これは極秘中の極秘だ』
『承認致しました。大事な情報、感謝いたします。最善の策で救出に向かいましょう』
この日を境に光秀は諜報活動に更に力を注いで行った。